INFOSTAのこと
INFOSTAは社団法人情報科学技術協会の呼び名で、企業などの情報専門家・大学の図書館関連の教職員の間の通称である。協会の活動状況については、そのブログに詳しい。私は、1982年にこの協会の評議員となって以来、1989年に協会の副会長を務めるに至るまで関りが深かった。協会主催の研究会などで幾度か講演もし、会誌「情報の科学と技術」には何篇か投稿していた。学協会は、基本的に企業などの団体会員と個人会員の会費で運営されている。しかし、特に団体企業会員の減少などにより、その運営は財政的に苦しいところも多くある。私が副会長を務めたINFOSTAもご多分にもれず、ほぼ慢性的に苦しい運営状況であった。 そういう状況のなか、2000年9月に設立五十周年を迎えることになり、それを契機に21世紀に向けた協会のビジョンの策定が始まった。協会では1988年に発足させた「ビジョン委員会」の提言を受けて、提言内容をどう事業化するかを検討するために、新たに「21世紀ビジョン事業化委員会」を発足させた。私はその会の委員長に指名され、協会のアクティブメンバーの中から11人が選ばれ委員になった。その内訳は、住友化学、サントリーなど企業4社、慶応大学などの大学教授4名、特許庁などの公的機関3名という内訳だった。2000年1月から6月まで5回の検討会が行われ、同年9月には会誌で検討内容が公表された。この報告では、本題に入る前に、学協会のさまざまな問題について書かれた論議を整理して、学協会が社会に果たす役割などについて述べられている。 実は、この報告「21世紀の協会ビジョン -21ビジョン事業化委員会の検討報告-」は、ここでの提案などが協会の運営方針として機関決定される前に、いわば委員長の職権で書いたものだった。当時新しい世紀を迎えるにあたって、学協会の使命や活動理念、そしてその社会的な存在理由などが、多くの学協会でも論議されており、そうした動向を「科学新聞」が1999年7月2日号から同年9月10日号で、十回にわ十り「学協会が社会に果たす役割」という特集を組んでいた。そこでは多くの学識経験者の意見が述べられており、それが総括的にまとめられ多くの提言もなされた。私の検討報告のこの部分は、協会に多くの学協会にみられる弊害である、同好会・仲良しクラブ的な雰囲気があり、協会自身がその社会的役割や使命を担う意識に欠けていると感じられ、この報告の場をかりて、改めて認識を深めるきっかけになってほしいとの願いがあった。この報告書に述べられている学協会の役割・使命についての記述、そして委員会で検討され提言されている内容は、いま読み返しても参考に値すると思っている。協会員には、機会があったらぜひ一読してほしいと願う。 報告書では、協会の財政基盤を固めるための協会ブランドを活かした幾つかの実現可能な事業を提案し、2005年までに3000万円ほどの収益が見込め、3億円程度の収入を見込む事業を提起している。協会はもともとオンライン情報検索サービスが普及し始めた1980年初めから、データベースを検索する技術を習得するセミナーを開始し、1級から3級までの検索技術資格試験を行っていた。たとえば1級資格は十名受験して1-2名しか合格できない高度な知識と検索技術を要求されるものであった。これらの試験収入は協会の大きな財源になってもいた。私は、既に始まっていたネット社会にあって、正しい情報の検索の知識と技術を小学生から成人にいたる一般人に啓蒙・普及し協会の社会的な役割を果たすことも、重要な使命の一つになると考えていた。ビジネスモデルとしては、たとえば漢字検定試験のようなスタイルで全国展開をはかるというイメージであった。 私は、この報告書をまとめた2000年春には副会長を辞していたので、委員会の提言などの事項のその後の取り扱いには関わっていない。しかし後日、仄聞したところでは、この検討報告自体が不評で、忘れ去られたようだ。ほとんどが企業等の専門職的なメンバーで成り立つこの協会に、ビジネス感覚で事業推進を期待するのは無理であったと思われる。だが、現在の協会長は、当時委員会のメンバーでもあった山崎久道氏なので、ぜひこの報告書を協会運営の参考にしてみてほしい。 |